< 撮影機材 Hasselblad X2D100C Hasselblad XCD38mm f2.5 >
原生林には樹齢数百年のコメツガ、トウヒ、シラビソなどが生い茂っており、陽が遮られた地上は昼間であっても薄暗く、まるで緑の絨毯を敷き詰めたように苔が一面を覆っていて、どこまでも続く神秘的な苔の森です。
整備された登山道があって人が踏み入ることのできる原生林として、白駒池周辺に11ヶ所の地区が点在しています。
苔に覆われた森は暗く鬱蒼として、美しくありながらも畏怖の念をいだかせるような異世界なのですが、一方で、苔むすことでたくさんの水を蓄え、幾多の生命を抱えて育てる母のような優しさを感じさせる森でもあります。
今日の写真は、深く暗い森の中に少しだけ差し込む木漏れ日が主役です。
雪で押し倒された倒木は、長い年月の間に苔に覆われるとたっぷりと水を含んで、今度は実生の芽が育つ大切な揺りかごになります。
倒れた木が作った森の隙間からは木漏れ日が差して、その木漏れ日を浴びて小さくて細い若木が元気に育ってきていました。
森の中で育まれている輪廻の命が、森そのものを育てているのかもしれません。
そして、その巡る命を支えているのが、森の隙間からそっと差し込む木漏れ日のような気がしました。
この若木が大木になる為には、小さな種から若木になるまでに費やされた今迄の時間の、何十倍、何百倍の時が必要になるでしょう。
森が刻む時間はあまりにも壮大で、そして森の時計は気が遠くなる程ゆっくりと進みます。