< 撮影機材 Hasselblad X2D 100C Hasselblad XCD 135mm f2.8 >
ここは・・・陸なのか、海なのか、雲なのか・・
正解は霧の朝の相模湾
お天気はさほど悪くはないはずなのに、海霧のせいで、とうに昇ったはずの太陽は姿を見せず、
波間に浮かぶ定置網がオブジェのように漂っていた。
相模湾の冷え込んだ朝に、深い霧が出ることはあまり知られていない。
相模湾は、富山湾、駿河湾とともに日本三大深湾と呼ばれ、深いところでは1000m以上の水深がある。
特に小田原以西では岸から少し離れるだけで急速に水深が落ち込んでいる。
その水深250m~1000m付近の深層部には親潮系の冷たい海水が流れ込んいるが、表層部には常に暖かい黒潮の海水が流れている。
二つの海流は決して混じり合わないので、この二重構造の潮の流れのおかげで、真冬でも湾の中の海面の温度が常に暖かい状態に保たれているのだ。
海面の海水温は、真冬でも17℃以下になることは滅多にない。
晩秋から早春の早朝、気温がぐっと下がって海水との温度差が15度以上になると、水面から蒸発した水蒸気が冷やされて霧が出る。
いわゆる「気嵐」と呼ばれる蒸気霧だが、もともとの海水温が高いのでそれほど寒くなくても霧が出る。
だから、富山湾の「けあらし」のように厳しい表情にはならないし、お天気が良くて冷え込みの大きい朝に霧が出やすいということもあって、海はいつも穏やかな優しい霧に包まれる。
澄み渡った水平線から昇る太陽も神々しいけれど、こんな風に薄ぼんやりと明けていく朝もまた美しい。